
この記事では、これから登山を始めたいと思っている方に向けて、山の地図の見方や登山計画の立て方をわかりやすく解説しています。
YouTubeと連動しているので、動画で見たい方は下記の動画をどうぞ!

イヌくん。前に山に行った時って、どんなふうにして計画を立てたの?
.png)
計画・・・ご来光が見たいっていうのが1番にあったから、日の出時刻と所要時間をネットで調べて、そこから逆算して登り始めたんだったかな。
-150x150.png)
今思うと、ネットで見れると思って地図も持ってなかったし、登山靴とか必要なものも全然足りてなかったから、結構めちゃくちゃな計画だったなー

ホントだね・・・。何も起こらなくて本当によかった。

今回のテーマは、
『山の地図を見ながら登山計画を立ててみよう』だよ。
今回の内容の要点は以下の通り。
- 山の地図は『登山地図』と『地形図』がというあること
- 等高線の見方
- 尾根と谷について
- 地図の縮尺について
- 計画を立てる上で注意するべきポイント
- 余裕を持った行動計画を立てる
- 最新の情報を確認する

登山で地図はマストアイテムだから、いざという時に困らないためにも、正しい地図の読み方を知っておくことが大切だよ。
.png)
地図ってガイドブックに載っているような、道と所要時間が書かれたやつしか見たことなかったなー

ガイドブックに載っているような地図は、あくまで参考程度だよ。
また、登山を始めたばかりのうちは、予想外のトラブルに遭うこともしばしばあるので、山の地図をみながら、しっかりと余裕を持った計画を立てることが重要だと言える。
今回は地図の読み方の他にも、計画を立てる上で特に注意しておきたいポイントなども、合わせてお伝えするよ。
.png)
はい、よろしくお願いします!
『登山地図』と『地形図』

まず、登山における地図とは『登山地図』と『地形図』の2つに分かれるよ。
- 登山地図
- ルート・コースタイムなど登山に必要な情報を掲載した地図。
- 地形図
- 測量を基に地図記号などで地形を細かく表した地図。

登山地図は、登山に必要な情報を掲載した地図のこと。ルートやコースタイム、詳細な地名なども細かく載っている。一方で、地形図は測量を基に地図記号などで地形を細かく表した地図のこと。
まずはこの二つの地図の違いに触れながら、解説していくよ。
旺文社の『山と高原地図』


登山地図で最も有名なのは、旺文社が出版する『山と高原地図』。
その道の所要時間(コースタイム)や、危険箇所の明記、トイレ・山小屋・水場の情報など、山域ごとに細かく情報を網羅してあるため、登山初心者の人にもわかりやすく、とても人気があるよ。また大抵の本屋さんにおいてあるから、手に入れやすい。
そして地図自体が水に強い特殊な紙でできているため、雨の日でも、山の中で安心して使うことができる。また、1年ごとに改訂版も出ているので、道の崩落や火山活動など状況の変化にも対応。
さらにスマートフォンのアプリ版もあるので、ネット環境がない場所でも、GPS機能を利用して現在地を把握することができるよ。
.png)
へぇー!山と高原地図、すごいな!地図に関してはこれさえあれば問題なさそうだね!


うん、山と高原地図には登山道が明確に記載されているから、向かう方向さえ合っていれば、道標など要所要所のポイントを確認しながら進めば、目的地にたどり着くことはそんなに難しいことではないんだ。
.png)
初心者のボクでもわかりやすそう!山と高原地図!
- 所要時間(コースタイム)・危険箇所・トイレ山小屋・水場の情報など、山域ごとの細かい情報を網羅。
- 書店で容易に手に入る。
- 雨に強い特殊な素材でできている。
- 1年ごとの改訂で、ルートの情報などが細かく更新されている。
- スマホアプリ版はGPSに対応しているので、オフライン下でも現在地の把握が可能。
地図を読む上で最低限理解しておいて欲しいこと

イヌくん、山と高原地図のような親切な地図に慣れてしまう前に、地図を見る上での知識として最低限理解して欲しいことが何点かあるんだ。
.png)
ん、なになに?
等高線について

当たり前だけど、山は街中とは違って、道の起伏が激しいよね。
それを平面上で表すために、地図では等高線を用いているよ。
.png)
等高線って、昔学校で習ったなー!どんなんだったかはちょっと忘れかけてるけど!

等高線は同じ高さの地点を線で結んだもの。
等高線を見ただけで、立体的な山の形が分かるようになれば、この先の道がどのようになっているのか、おおよその予測を立てられるようになり、ペース配分などもしやすくなるよ。
.png)
これから急な登りがくるぞー!って、心づもりができるだけでも気持ち的にも違ってくるね!計画を立てる上では大事だ!

例えば、この等高線の図では赤矢印の部分が山の頂点を表している。


では、山頂に向かうためには、AとBどちらの道の方が楽に登れると思う?

.png)
えっ、やっぱりBの方が距離が短いしすぐに登れそうだから楽なんじゃないかな?

そう思うよね。でも、この等高線に注目してみると、そうとも言えないことがよくわかる。
等高線は、間隔が広く空いているほど傾斜が緩く、逆に細かく密になっているところは傾斜がキツいことを表しているよ。


Bの道は歩く距離は短いけれど、等高線の間隔が狭く傾斜はキツい。これは斜面を直登している状態になるため、楽に登れるというわけではないんだ。
それに対して、Aの道は等高線の間隔が広いところを回り込む形で登っているため、距離的には増えるが、一気に標高を上げずに徐々に傾斜を登っている。
道の状況などを考えずに、等高線だけで判断すると、この場合はAの方が楽な登り方をしていると言えるんだ。
.png)
なるほど!等高線の間隔に注目することが大切なんだね!
等高線は、地図における同じ高さの地点を線で結んだもの。間隔が広く空いているほど傾斜が緩く、逆に細かく密になっているところは傾斜が急であることを表す。
『尾根』と『谷』

また登山時に地図をみる上で大切なのは、自分が今どこにいるのかを把握できるかどうかということ。
立体的な地形をイメージをするためには、地図の尾根部分と谷部分を把握できるようにしておく必要があるよ。

尾根と谷・・・

尾根というのは谷と谷に挟まれた、山の高い部分の連なりのこと。稜線という言い方をすることもあるね。

.png)
なるほど。


例えばこの等高線。


この地形において、尾根と言えるのはこの赤線部分。山頂からみて外側に凸型に張り出した部分だと考えるといいよ。


逆に、山頂からみて内側へU型やV型に窪んだ青線部分が谷ということ。
山で降った雨は谷に向かって流れていくから、谷の低い部分にいくにつれて、沢や川が形成されていくよ。
.png)
ふむふむ。

地図を読む上でこの尾根と谷を意識すると、山の様子をもっと詳しく読み取ることができるんだ。
.png)
万が一道に迷ったとしても、地図がちゃんと読めれば冷静な判断ができそうだね。

そう。地図読みの知識を正しくつけることは、遭難しないためにもとても大切。地図を持っていたとしても、万が一の時に正しく読めないようでは意味がないからね。
-150x150.png)
ほんとだね・・・!
- 尾根
- 谷と谷に挟まれた、山の高い部分の連なり。稜線とも言う。
- 地図では山頂からみて外側へ凸型に張り出した部分を指す。
- 谷
- 山で降った雨は谷に向かって流れていき、谷の低い部分にいくにつれて、沢や川が形成される。
- 地図では山頂からみて内側へU型やV型に窪んだ部分を指す。
縮尺について

あともう一つ、地図には縮尺があることを知っておいて欲しいんだ。
先ほど紹介した山と高原地図は通常50000分の1の縮尺で表記されているよ。これは地図上の1センチが実際の500メートルということを意味していて、詳細な地形は少し分かりづらいんだ。

そうなんだ・・・!

なので、もっと詳しく地形を見るためには、25000分の1の縮尺で作成された、国土地理院の地形図を利用するよ。
地形図には登山道や地名は細かくは記載されていないけれど、地形に関しては登山地図より細かい情報が記載されている。


山と高原地図は20メートルごとに等高線が引かれているのに対し、地形図は10メートルごとに引かれている。また、地形図には地図記号も細かく表記されているので、実際に山歩きをしている最中に、風景と照らし合わせながら見ることができるようになると、より登山が楽しくなるだろうね。
.png)
なるほど!
山と高原地図だけじゃなく、地形図も組み合わせて使って登山をすることが理想なんだね。

そう。
山歩きを楽しみながら、かつ、安全に登山をするために、これは必要なことだと私は思うんだ。
.png)
そうだね!
- 旺文社 山と高原地図
- 通常50000分の1の縮尺 (※縮尺は山域によって異なる)
- 地図の1cm=実際の50000cm=500m
- 等高線は20mごとに引かれている
- 国土地理院 地形図
- 25000分の1の縮尺
- 地図の1m=実際の25000cm=250m
- 等高線は10mごとに引かれている
- 地図記号の記載があり、より詳細な地形の情報を掲載

ゆくゆくは“”山座同定”ができるようになると、いいよね。

山座同定??

地図やコンパスを使って、どの位置からでも遠くに見える山が何という山なのか判定できる、という意味だよ。
.png)
そこまできたら、もう山博士じゃん!
そんなふうになれたらすごいな!まずは地図のこと勉強しないと!

地形図は国土地理院のホームページでダウンロードや印刷ができるから、気軽に登山の時に活用できるよ。
.png)
へー!そうなんだ!ありがたい!

まずはそれを使って、家で尾根と谷部分にそれぞれ色を付ける練習をすると、地図読みの目を鍛える練習にもなるよ。
.png)
なるほど!

そして、その地図を休憩のときに眺めながら、実際の地形を照らし合わせて確認する。まずはそんなふうにして、地図に慣れていけばいいと思うな。
.png)
わかりました!
国土地理院のHPより、簡単に地形図のダウンロードができます!
地図読みの練習に活用してみて下さい!
登山の計画時に注意すべきポイント

では、ここからは実際に計画を立てる上で特に注意して欲しい点を伝えていくよ。
こんな場合は余裕を持った計画を

山と高原地図などの登山地図に記載されたコースタイムはあくまで目安。誰が登ってもその時間通りに登れるとは限らないよ。
例えば以下のような場合、特に余裕を持った計画が大切。
- 大人数でのグループ登山
- 渋滞が発生するような人気ルート
- テント泊など重装備での登山
- 雨予報時や、雪渓歩きがあるルート

まず、大人数でのグループ登山時。一人だとスイスイ進むかもしれないけれど、グループの時は個人の体力レベルの違いなども考えて、全体的に余裕を持っておいた方がいいね。
.png)
そうだね!
ボクなんかは道端のお花の写真を撮ったり、風景もゆっくり楽しみたいからもっと時間がかかっちゃうかも!

それも大事だね。
あとは、渋滞が発生するような人気ルートでは、すれ違い待ちなどで思うように前に進めないことだってある。
.png)
それじゃあせっかく早く出発しても意味ないことだってあるね・・・

可能ならば土日やハイシーズンを避けて計画する方が快適かもね。
他にも、テント泊など重たい荷物を伴う登山時や、雨予報であったり、雪渓歩きがあるルートでは、レインウェアやアイゼンの着脱のことも考えておいた方がいいね。
.png)
ほんとだね。素早く着る練習もしておいた方がいいね!

ははは。
そこまではしなくてもいいと思うけど、パッキングの時に取り出しやすい位置に入れるよう意識することが大切かな。
.png)
そうだ!
パッキングにもやり方があるもんね!
早出早着を心がける

イヌくん、0話で説明した、早出早着のこと覚えてるかな?
.png)
あ、朝は早朝に出発して昼の早い時間に目的地に到着しておくこと、だよね!

そうそう。
登山では、15時から遅くとも16時までには、その日の目的地に到着しておく必要があるんだ。特に山小屋の宿泊を伴う登山では、あまりにも遅い到着は心配と迷惑をかけてしまうことだってある。
.png)
そうだね、そのためにも早出早着!

もしも到着が遅くなる場合は、可能な限り連絡を入れるようにね。
.png)
わかりました!山でも街でもそれがマナーだね!
最新の情報を確認しておく

最後に、もう一つ注意すべきポイントとして、最新の情報を確認しておくことも大切。
具体的には以下の通り。
- バスなどの時刻表
- 登山口までの道路の通行止め情報
- 登山道の通行止め情報
- 山小屋の営業期間
- 水場・トイレの有無
- 火山活動による入山規制情報 など
.png)
そうか、
夏から秋の登山シーズンに大雨とか台風が来ることが多いもんね。

あと、これは昔に私が実際に経験したことなんだけれど、下山口にトイレがあると思っていたのに、改修工事中で利用できなかったことがあって。おかげで大変な思いをしたことがあるよ。
.png)
うわ、携帯トイレ、使わなかったの?

うん、その時は駅まで急ぐことを選んで、なんとか間に合ったんだけれど・・・。ほんと大変だったんだ・・・。
-150x150.png)
山を下りてからじゃ携帯トイレはちょっと使えないもんね。

後からホームページをみるとちゃんと工事中であることが書いてあったから、最新の情報を調べておくことはとても大切だと痛感したんだ。
現地に行ってしまってからではもう遅いから、インターネットで公式サイトを確認するなど、最新の情報を確認しておいてね。
.png)
1話で教えてもらった、ヤマレコとかYAMAPの出番だ!

そうだね。
バスの時刻表や山小屋の情報は、シーズン初めに登山雑誌の付録でついてくることが多いから、それも合わせてチェックしてみてね。
.png)
わかりました!
まとめ

イヌくん、山の地図と登山計画の立て方については以上だよ。
今回の要点をまとめると、以下の通り。
- 山の地図は登山地図と地形図の2種類があり、2つを合わせて使うことが安全な登山に役立つ。
- 早出早着を心がけ、時間的余裕のある計画を。
- 事前に最新の情報を確認しておくこと。
.png)
登山が初めてのうちは予想外なことも起こるかもしれないもんね。楽しい登山のためにも、気を付けておかないとね!

次回は、山でのルールやマナーについてお伝えするよ。
山特有の暗黙の了解もあるから、是非知っておいてね。
.png)
暗黙の了解か!知らなかったら恥かいちゃいそう・・・

では、今回はここまで。
.png)
ありがとうございました!