
この記事ではこれから登山を始めたいと思っている方に向けて、登山ではどんな服装をすれば良いのか、できるだけわかりやすく解説しています。
YouTubeと連動しているので、動画で見たい方は下記の動画をどうぞ!

イヌくん、前に山に行った時ってどんな格好していったって言ってた?
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えっと、半袖Tシャツの上に長袖のトレーナー、長ズボンだったかな!汗が乾きにくくて体が冷えて困ったんだよね〜

そうだったね。登り始める前は寒くても、行動中は必ず暑くなる。イヌくんはいっぱい汗をかいているのに、そのまま山頂まで行って、寒い思いをしたって言ってたよね。
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そうそう、トレーナーが綿素材で乾きにくい素材だったのがダメだったんだよね。あとトレーナーはチャックも付いてないから、脱ぐのが面倒になっちゃったのもあるなぁ。
普段着てるような服で山に行っちゃったのが間違いだったよ・・・

そうだね。まぁ、ものによっては山で着ても良いものだってあるから、今日はその辺りも含めてお話しするよ。
登山時の服装の選び方

今回のテーマは、
『持っている服でも大丈夫?登山時の服装の選び方』。
まず初めに今回の要点を伝えると、以下の通り。
登山の服装の基本『レイヤリング』
- ベースレイヤー
- 一番肌に近い側に着て、汗を素早く発散するウエア。
- ミッドレイヤー
- ベースレイヤーの上に着て体温を保温し、ベースレイヤーが吸い上げた汗を発散する速乾性と通気性があるウエア。
- アウターレイヤー
- 一番外側に着て、雨風などの外的環境による冷えや濡れから身を守るウエア。
★状況に応じて3種類を脱いだり重ねたりすることが大切!

イヌくん、登山の服装で最も大事なポイントはなんだった?
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あっ、『重ね着』だよね!

そうそう。重ね着をすることでうまく体温調節をして、なるべく汗をかかないようにすること。重ね着はレイヤリングと呼ばれ、登山では基本中の基本だよ。
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レイヤリングかぁ。初めて聞いた!具体的にはどんな格好をすることなの?

大きく分けると、3つの種類のレイヤーがあり、この3つを状況に応じて脱いだり重ねたりすることがポイントとなるよ。
ベースレイヤー

まず初めが、ベースレイヤー。
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ベースレイヤーとは肌に一番近い位置に着る服のことで、下着やTシャツのことを指すよ。ベースレイヤーの役割は、一番肌に近い位置で汗を素早く発散すること。
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なるほど!肌が濡れていない状態にするってことだね。

そう、だから水分を貯めないポリエステルなどの化学繊維が使われることが多いよ。
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ってことは、ランニングで着るようなTシャツでも良いってことだよね!

そうだね。それでも大丈夫。
メリノウールについて

化学繊維の他に、メリノウールという天然繊維もベースレイヤーとして優れているとされるよ。
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メリノウール?普通のウールとは何が違うの?
- オーストラリアやニュージーランドなどで飼育されるメリノ種の羊からとれる羊毛のこと。ウールの中でも最高品質とされる。
- 保温性、通気性、消臭効果、肌触りなどにおいて特に優れており、登山に最適。
- 濡れると乾きにくいが、汗冷えはしにくい。
- 虫に食われたり縮むことがあるので、お手入れ時は注意。

メリノウールはオーストラリアやニュージーランドなどで飼育されるメリノ種の羊毛のことで、ウールの中でも最も高級なものとされているよ。
メリノウールは一般的に繊維が繊細でとても細く、その繊維の特性上、登山に最適な繊維と言われている。具体的には保温性・通気性・消臭性、そして肌触り。メリノウールはこの4点について特に優れているんだ。
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前に登山用の靴下の話を聞いた時に、保温性については教えてもらったよね!

うん、ウールと聞くと冬に着る素材のイメージがあるかもしれないけど、実はその吸湿性と通気性から、熱を汗とともに外に発散してくれるので、夏でも快適に着ることができるよ。
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確かに、ヒツジは一年中モフモフしてるもんね。

そう、また天然繊維が故に汗などによるニオイを消臭してくれる効果もある。
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すごいね!

またウールは直接肌に触れるとチクチクとするイメージがあるかもしれないけど、メリノウールは非常に細い毛であるため、肌触りも柔らかい。
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そんなに優れているんだね!メリノウール様様だ!

もちろんデメリットもあって、その吸湿力の高さ故に、乾きにくい素材ではある。でもメリノウールの繊維の性質上、肌が濡れている状態にはなりにくく、汗冷えはしにくい。登山では問題なく使用できると言えるよ。
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不思議な素材なんだね!

あと、もう一つお手入れ方法や保管方法を間違えると、縮みやすかったり虫に食われやすかったりするので、そこは気をつけるべきかな。
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わかりました!

ベースレイヤーにも厚みや素材の違いなどによって様々な種類があるので、季節に合わせて自分に合うものを見つけてね。
ユニクロのヒートテックはベースレイヤーに使える?
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ヤギ先生!ちなみに、ユニクロのヒートテックってベースレイヤーとして登山では着ても大丈夫なの?

イヌくん、良い質問だね。
ヒートテックは水分を得ると発熱する吸湿発熱の作用を利用しているよ。体が発する水蒸気状の汗が吸湿発熱素材に触れることで熱が発生し、人は暖かいと感じる。
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うんうん、それは聞いたことある。

この段階までは良いんだけど、ヒートテックに含まれるレーヨンという素材は、吸湿性はとても高いけど、同時に乾きにくい素材。
登山のような汗を大量にかくような場面では、繊維中に貯められる水分が飽和してしまい、逆に肌を濡らすことにつながってしまうんだ。
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そうなんだ!
ボクが山に行ったとき汗が全然乾かなかったのは、ヒートテックを着てたことも原因だったのか!

それも原因の一つだね。一見インナーとして登山にも使えそうな気がするけど、その素材の特性を理解しておくことが大切だよ。
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わかりました!
ミッドレイヤー

次に、ミッドレイヤーについて。
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ミッドレイヤーはベースレイヤーの上に着て体温を保温し、かつ、ベースレイヤーが吸い上げた汗を発散する速乾性と通気性があるウエアのこと。
体温を保温する空気の層を作り暖かさを生み出す役割があり、フリースやダウンジャケットが代表的かな。
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フリースやダウンは街中でも着るから、登山でも使えそうだね。

そうだね。
最近ミッドレイヤーに求める機能性はかなり多様化しているので、状況に応じて使い分けるようにすると快適に過ごすことができるよ。
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他にはどんな種類のものがあるの?
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例えば、山用のシャツ、ソフトシェル、なんかもミッドレイヤーに分類されるよ。また、化学繊維でできたジャケットなど、素材の違いによって機能性が変わるものもあるよ。
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山用のシャツは結構薄いイメージだけど、ミッドレイヤーになるんだ!

うん。この表は、それぞれのミッドレイヤーの特徴を性質別で評価したもの。
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わー、ウエアによって優れている部分は様々なんだね。

うん、全てにおいて100点のミッドレイヤーはないから、目的や状況によって使い分けることがポイント。
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なるほど。

例えば、フリースはミッドレイヤーとしての機能性は高いけど、コンパクト性については少し劣る。
ダウンジャケットは保温性とコンパクト性には優れているけど、水に濡れるとたちまち使い物にならなくなってしまう。
その点、ソフトシェルは保温性については少し低いが、多少の雨なら撥水してくれるものもある。
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へぇー!ものによっていろんな特徴があるんだね!

立ち位置としてはミッドレイヤーではあるけど、次に説明するアウターレイヤー寄りのものも存在すると思ってもらうとわかりやすいかな。
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なるほど!確かに登山用品店には色んな機能性のある素材を使った服がたくさん置いてあったし、状況に合わせて使い分けることが大事ってことなんだね!
アウターレイヤー

では次はアウターレイヤーの説明をするね。


アウターレイヤーは今までのレイヤーとは少し違って、雨や風などの外的な環境による冷えや濡れから身を守るウエアのこと。
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ってことは、レインウェアもアウターレイヤーってことだ!


うん、その通り。
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雨が降っていなくても、レインウェアは風除けとしても使えるもんね!

そうだね。ただ気候によってはレインウェアでは蒸れやすいと感じる人もいるし、もっと気軽に羽織れる風除けが欲しい、と思う人も多くいる。
そういう人にはレインウェアよりもっと軽量で薄手のウィンドシェルが人気だよ。

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わー、すごくペラペラそうだけど、これが風除けになるんだね。

うん、これを一枚持っておくと、少し風が寒いときや日差しが気になるときなどでもさっと羽織ることができて便利だよ。
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確かに、山以外の街着としても馴染みそうで使いやすそうだ!

他には、ハードシェルもアウターレイヤーの部類に入るよ。

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レインウェアとハードシェル、見た目はよく似ているけどどう違うの?

ハードシェルは雪山環境をベースに作られたものが多く、まずレインウェアと比べて硬くゴワゴワとしてるよ。
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そうなんだ!

ハードシェルは雪山で使うアイゼンやピッケルなどが引っかかったり擦れたりする場面を想定しているため、硬くて頑丈な生地でできているんだ。
また防風性も高く、その硬さと重さによってウエア自体がバタつきにくくなっているよ。そのため、内側の熱が外に逃げにくく、体温を保持してくれるんだ。
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なるほど。ボクみたいな初心者はまだ雪山には行かないし、ハードシェルではなくレインウェアで十分だね。

そうだね。
逆に雪山を始めたばかりの人が、レインウェアをハードシェル代わりにしてしまうこともある。それがダメだとは一概には言えないけど、吹雪など過酷な環境下ではレインウェアは機能的に劣るので、もし雪山も長く続ける気があるならハードシェルは持っておいて欲しいな、と私は思うよ。
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わかりました!
帽子やグローブもレイヤリングをする

ちなみに、帽子や手袋などの小物類に関してもレイヤリングの考えを当てはめることができるよ。
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少し肌寒い程度なら薄手のインナーグローブやフリースグローブ、稜線などの風に晒されやすい場面では断熱性と防風性のある2層式のグローブを使うなど、状況によって末端を冷やさないように調整する。
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そっか、服だけじゃなくて、体全体で考える必要があるんだね。

帽子に関しても同様で、メッシュキャップ、ニット帽、レインハットなどを使い分けて調整するよ。
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そうなんだ。でも、夏山だったらそこまで気にしなくても大丈夫だよね?

イヌくん、実は夏でも低体温症のリスクはあるんだよ。
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え!そうなの?
夏山でも低体温症のリスクがある
2009年7月、北海道大雪山系トムラウシ山が悪天候に見舞われ、ツアーガイドを含む登山者8名が低体温症で死亡した事故。夏山の山岳遭難事故としては近年まれにみる数の死者を出した惨事となった。(Wikipediaより)

2009年のトムラウシ山遭難事故が発生したのは7月。
軽装備で登ったり、天候の判断を誤ると天気の変わりやすい山の上では、長時間雨や風に晒され続けると場合によっては、低体温症など命に関わる事態にもなりかねないんだ。
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こんなことが起こっていたんだね。ガイドさんまで・・・
事故を防ぐためにも、一人一人が正しい知識を身につけることって、とっても大切だ!

そうだね。日帰りできる低い山でも、遭難のリスクは一定数存在するからね。安全で快適な登山のためにも、まずは日頃からレイヤリングを意識するようにしてみてね。
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はい!
前にヒートテックとかトレーナーを着てた自分が、もう考えられないな・・・
まとめ

今回の要点をまとめると、以下の通り。
- 登山での基本『レイヤリング』を意識すること。
- ベースレイヤー・ミッドレイヤー・アウターレイヤーの3種類のウエアを、天候や状況に合わせて素早く着脱し常に肌が濡れていない状態を作り出すことで、適正な体温を維持することが大切。

とにかく大切なのは、肌が濡れていない状態を保ち、体温を維持すること。3つのレイヤーの役割をしっかりと理解した上で、上手に体温調節をするようにしてね。
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わかりました!

次回のテーマは、登山の装備・持ち物シリーズの最終章、
『あると便利!持っててよかった登山をさらに快適にする登山用品』だよ。
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おー、こういうの知っておきたい!

人によってはないと困るというぐらい必需品となっている便利グッズも紹介するよ。
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便利グッズ!是非参考にさせていただきたい!

では、今回はここまで。
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ありがとうございました!